ペルソナシナリオ法を用いたホームネットワークシステムのサービス開発と評価†背景†近年,ネットワーク家電やホームネットワークシステム(HNS) の研究・開発 が盛んに行われています. しかしながら,現状では,HNS は一般家庭に広く普及していません.その理由としては,ネット家電が高価であることや,マルチベンダ環境での相互接続性の問題を含む,さまざまな技術的課題と共に,ユーザにとって真に価値のある(キラーアプリケーションとなる)サービスがHNS 上で提供されていないことが,普及を妨げている大きな要因と考えられます. アプローチ†本研究では,HNS を利用するユーザの立場から,より便利で付加価値の高いサービスを考案・開発する手法の確立を目指します. この目的の達成のため,HNS のサービス開発に対して,HCD(Human-Centered Design)の代表的な手法である,ペルソナシナリオ法を適用することを提案します. ペルソナシナリオ法とは,製品のターゲットとなるユーザの典型的な人物像(=ペルソナ) を決め,ペルソナが満足するようなシステムやサービスを考案・設計する手法で,本手法を用いることで,開発者の独りよがりにならずに,ユーザの要求抽出,充足が可能となります. 適用事例と評価実験†なお,本研究では,HNS のサービス開発に対してペルソナシナリオ法を適用し,その効果を以下の4 つのアプローチに沿って確認しました.
まず(1)については,HNS における付加価値サービスの考案・開発をターゲットとして,ペルソナシナリオ法の適用工程を定義しました.全工程は,ペルソナ生成,サービス立案,メインペルソナ決定,サービス選定,ヒューマンインタフェースデバイス決定,ペルソナ要求定義,サービスシナリオ記述の7工程から構成されます. また,(2) については,(1) で定義した工程を実際のHNS のサービス開発現場に適用し,サービスの抽出を行いました. さらに,(3) については,(2) によって抽出されたサービスの1 つである『今日の献立サービス』に関して実ユーザを用いたユーザビリティ評価を行い,その結果,提案手法によって抽出されたサービスがメインペルソナに合致する実ユーザを満足させることを確認しました. 最後に(4) については,提案手法のプロセスの評価として一般のサービス開発者を用いたシナリオ作成評価実験を行い,その結果,人間中心設計について学んでいない一般の サービス開発者であっても,ペルソナを利用することでユーザを中心としたサー ビスの抽出が可能であることが明らかになりました. 関連研究発表†伊原誠人, 榊原弘記, 湯浅直弘, 中村匡秀, 松本健一, ``ホームネットワークシステムにおけるサービス開発へのペルソナシナリオ法の適用と評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.106, No.578, pp.405-410, March 2007. |