背景

近年,国内の消費エネルギーは増大しているます.特に,家庭の消費エネルギーは2009年の国内総消費エネルギーの14.2%を占めており,家庭消費エネルギーはここ30年で倍以上になっています.これは,世帯数の増加と家電機器の普及・大型化などによる消費電力増加が要因となっています.以上の背景より,各家庭における省エネが重要な課題となっています.

我々の研究室では,生活者の省エネを促進すべく,消費電力振り返りサービスなどを実現しています.このサービスは消費電力を可視化して,生活者が自らの消費行動を振り返ることで省エネを促すサービスです.

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図1:電力消費振り返りサービス

省エネに対するアプローチ

本研究において,我々は省エネ行動を「モノによる省エネ」と「ヒトによる省エネ」に大別しています.

  • モノによる省エネ : 家電機器の効率化や高性能化によって機器自体の消費電力を削減する手法.機器による自動省エネなので,持続性があります.
  • ヒトによる省エネ : 生活者自らが生活に影響にない範囲で省エネ行動を行う手法.高い効果が見込める場合が多いが,生活者の行動に依存し,生活の負担になるという問題点があります.
  • ピークカット

近年注目を集めている省エネの手法の1つとして,「ピークカット」が挙げられます.これは,消費電力のピーク時の最大消費電力を削減する手法です.この手法は,ピーク時のみに省エネ行動を行えばよいため,ヒトが省エネを行うにあたり相性が良いと考えられます.

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図2:ピークカット

現状の課題

現在の省エネサービスの欠点として,「生活者の省エネ意識は千差万別であるため生活者全てに対して適切な省エネサポートを行うのが難しい」といったことが挙げられました. 例えば,省エネに対して積極的な生活者と消極的な生活者では適切な省エネサポート内容は異なります.積極的な生活者は見える化などのサポートで適切な事もありますが,消極的な生活者に対しては省エネの自動化などのサポートが必要な場合もあります.

目的

そこで我々は,家庭単位での持続的かつ自発的な省エネの実現を目指し,「ヒトによる省エネ」と「ピーク時消費の削減」を組み合わせた個人適応型省エネ行動を提案します. 実現のための要求は,「全ての生活者が,自らの生活スタイルや省エネ意識に合わせて,容易かつ持続的にピークカットおよび省エネを行えるようにすること」です. 我々は,この要求を満たすためのAndroidアプリケーション「Peak Cutter」を開発しました.

このアプリケーションで生活者それぞれに適切な省エネサポートを行うことによって,生活者の省エネ意識を向上させました.

ピークカッターの機能

ピークカッターの機能は以下の通りです.

  • 消費電力見える化機能
    • 家庭内の消費電力を下図(a)のようにグラフ化します.
  • 電力消費のピーク時通知機能
    • 家庭内の消費電力が下図(a)の下部に示されるとおり,現在 > 目標となると,生活者に対して以下で解説する通知方法設定機能で設定した手法にのっとり通知を行います. -家電機器の遠隔制御機能
    • 遠隔で家電をON,OFFにする機能です.家庭内の消費電力が下図(a)のグラフをタッチすると該当する家電操作画面になります. -通知方法設定機能
    • 以下の4つの状態に設定することにより,下図(b)に示される通知画面に加えて,通知方法を変更できます.
      • 仕事 : 下図(b)に示される通知画面のみ.
      • 移動 : バイブレーションによる通知.
      • 休憩 : バイブレーションとサウンドによる通知.
      • 自動 : スマートフォンの状態に応じて自動的に変更される.サイレントモードだと仕事と同じ.バイブレーションモードだと移動と同じ.通常状態だと休憩と同じになります. -サポートレベル設定機能
    • 生活者の省エネ意識に応じて省エネサポートを変更できます.変更内容は以下の3つから選択します.レベルが高いほど省エネに対して消極的なユーザ向けで自動的な省エネになっていきます.
      • レベル1 : ピーク時に,消費電力グラフを見て,ユーザが自分で無駄な家電を切るなどの省エネを行います.
      • レベル2 : ピーク時に.ユーザが下図(c)であらかじめ選択した家電の電源を自動で切ります.
      • レベル3 : レベル2の機能に加え,ピーク時でなくても,在室人数が0人の時に家電の電源を切るなど,無駄があれば自動で省エネを行います.
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図3:ピークカッターの利用画面

ピークカッターのサポートレベル設定機能の簡易利用図を以下に示します.

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図4:サポートレベル設定機能の利用画面

実装

提案アプリケーションをAndroid端末用に実装しました.このフレームワークは以下のように働き,PeakCutterを実現します.

1. PeakCutterは,HNS上に存在する消費電力データベースから消費電力を読み取り,XML Parserを利用して,Mobile Device上にグラフ化します.

2. Peak Monitorは,消費電力が閾値を超えたときに生活者に対して通知を行う.

3. HNS Controller は,ボタン押下時に,Event Listenerからイベントを受け取り,家電の操作を行います.その時に,同時に操作内容をOperation Logに蓄積します.

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図5:提案フレームワークのアーキテクチャ

評価

PeakCutterの有用性を確認するため,5人の被験者を対象に評価実験を行いました. 被験者に実際に研究室の居住スペースで1週間省エネに取り組んでもらいました.

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図6:作成されたユーザインターフェース

また,被験者のコメントは以下の通りです.

  • 肯定的なコメント
    • 自動的に節電してくれるのが便利.
    • ピーク時に優先度の高いものを設定してにできるのが便利.
  • 否定的なコメント
    • 勝手に消えたら他の人が困る時がある.

以上の結果より,Peak Cutterは被験者の省エネ意識を促進して,実際に省エネ行動に効果があることが確認できました.

発表文献

国内論文

  • [1] 徳田 啓介, 柗本 真佑, 中村 匡秀,“スマートフォンを利用したピークカット促進 アプリケーションの提案と実装”,情報処理学会研究報告, vol.2012-MBL-63, no.4, August 2012.
  • [2] 徳田 啓介, 柗本 真佑, 中村 匡秀, ``個人に適応した宅内ピークカット促進アプリケーションの考察,'' , no.457, 電子情報通信学会技術研究報告書, March 2013.

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Last-modified: 2013-03-13 (水) 15:46:29 (2139d)