ホームネットワークシステム(HNS)のアプリケーションの一つとして,複数の家電を連携制御する家電連携サービスの研究が進んでいます.
単体では正常に動作する連携サービスでも,複数を同時に実行すると「サービス競合」と呼ばれる機能の干渉・衝突により,ユーザの意図しない動作が行われることがあります.
HNS のサービス品質を損なわないためにも,サービス競合を検出し解消することが求められます.
我々は,サービス競合の動的な検出と,優先度による解消を行うオンライン競合検出・解消法を提案しています.
そこで,さらに妥当性の高いサービス競合の解消を行うために,サービスの有効期間であるアクチベーション,サービス内の重要なメソッドである必須メソッド,サービスの中断再開処理を導入した,サービス競合解消方式を提案します.
ユーザの宅内に配置されるネット家電は非常に多様で,同じ種類の家電であっても提供する機能に差がある状況は十分に考えられます.そこで,その種の家電がベンダに因らずに標準的な機能を抽出し,それらの機能をネット家電クラスとして定義することで,ユーザの宅内環境に依存しないネット家電データを開発者に提供することができます.
ネット家電インスタンス定義では,ネット家電のURIやAPI種類等の宅内に配置された各ネット家電への詳細なアクセス方法に関する定義を保持します.ここで言うネット家電インスタンスはユーザの宅内環境に配備された個々のネット家電そのものを指し,すべてのインスタンスは特定のネット家電クラスに属しています.ネット家電へのアクセス手法をインスタンス定義として記述することで,提供するサービスに依存しないネット家電の情報を集約することができます.
ネット家電サービス定義はサービスに依存するネット家電データを保持する定義で,サービス開発者はネット家電を用いて特定の処理をユーザに提供するために,ネット家電サービス定義を作成します.ネット家電サービス定義では,サービス実現のためのアルゴリズムとネット家電オブジェクトが記述されています.ネット家電オブジェクトは対象となるネット家電クラスに基づく抽象表現で,個別のネット家電インスタンスに依存しません.定義内のネット家電オブジェクトとネット家電インスタンスの関連づけをサービス定義に記述することで,サービスのアルゴリズムとネット家電インスタンス間の疎結合化が可能となります.結果として,一つのネット家電サービス定義を多様なユーザ環境に対応させることが容易化されます.
このように,ネット家電が持つ各種の情報を異なる粒度ごとに分離することで,再利用性の高い標準データモデルを構築することが可能となります.
江上 公一,井垣 宏,中村 匡秀, ``ホームネットワークシステムにおけるサービス開発を容易化するネット家電標準データモデル,'' 電子情報通信学会 OIS研究会, vol.OIS2008, pp.75-80, March 2009.