日本は超高齢社会に直面しており,介護を必要とする人が増えています. 一方で,介護者が不足しているという問題も指摘されています. そのため人手によらない高齢者や認知症者のためのケアや支援が必要となります.
その中で,私たちはIoTやICT技術を利用し,認知症者が自宅で日常的に対話を行える認知症ケアシステムを開発しています. このシステムは音声対話が可能なロボットプログラムであるバーチャルエージェント(VA)を活用し,認知症者との対話コミュニケーションを可能としています.これまで人間の介護者が行ってきたケアの一部をこのシステムが担うことで,在宅ケアによる人間の負担を軽減します.
先行研究において,Linked Open Data(LOD)を活用して個人に寄り添った話題を動的に生成する方法を提案しています.
先行研究におけるシステムは,システムからの質問に対するユーザの回答から新たな話題を提供するものでした. システムとユーザの会話はその場限りのもので,会話を通して得られたユーザ個人にまつわる情報(個人オントロジー)を蓄積して,次以降の会話に活用できるようなシステムではありませんでした.
以上の課題を解決するために,本研究では,ユーザの個人オントロジーをLinked Dataで表現・管理し,エージェントとユーザの対話を通して,個人オントロジーを動的に構築する仕組みを提案します. 具体的には次の3つのステップで構成されます.
システムがユーザとの対話の中から,そのユーザにまつわる情報を発見し,オントロジーとして構築します.
A1で構築した個人オントロジーをLinked Data形式で表現し,蓄積します.
Linked Dataで表現されたシステム内の個人オントロジーと外部のLinked Open Data(LOD)をリンクします.これによって,話題の発展に必要な関連概念を,インターネットの集合知から調達することを可能にします.