Research/SmartCity

背景

近年多くの自治体が防犯情報サービスを提供しています. 防犯情報サービスとは,インターネットを通じて犯罪や事件の情報を住民に提供し,防犯に役立ててもらうサービスです. 典型的には,事件の情報や防犯マップをWebサイトで提示したり,電子メールを使って事件情報を希望者に配信したりします.

その例として,兵庫県警が提供している「ひょうご防犯ネット」があります. 「ひょうご防犯ネット」は,兵庫県警が認知した事件の情報をWebで配信するもので,メールアドレスを登録しておけばその情報をメールで受け取ることもできます. 福岡県警も同様のメール配信サービス「ふっけい安心メール」を配信しており,事件発生地点を地図上に表示した「ふっけい安心マップ」をWebに公開しています.

課題

既存の防犯情報サービスでは,あらゆる事件情報がすべてのユーザに向けて等しく配信されています. 地域では様々な種類の事件が様々な場所で発生しますが,ユーザの生活圏は個人によって異なります. したがって,あるユーザにとっては生活に影響する重大な事件であっても,遠く離れたところに住む別のユーザにはそこまで深刻でないかもしれません. しかしながら,こうした個人毎に異なる事件に対する深刻度は,既存の防犯情報サービスでは考慮されず,すべての事件情報が全ユーザに同じ形で届きます. よって,一日に何件もの事件情報が配信された場合,ユーザは自分にとって重要な事件の情報を見逃してしまう可能性があります. また, Web 上にアーカイブされた多くの事件リストからリアルタイムに自分に関連するものを探し出すことは,一般のユーザにとって非常に手間がかかる作業です.

アプローチ

本研究では,ユーザの生活圏に応じて,事件情報を個人適応する新しい防犯情報サービス PRISM(Personalized Real-time Information with Security Map) を提案します.

PRISMは,既存の防犯情報サービスが配信する事件情報をリアルタイムに解析し,ユーザが入力した生活圏に応じて,そのユーザにとっての事件の深刻度を算出します. 具体的には,生活圏からの距離,事件発生からの時間,事件の種類に基づいて,そのユーザにより近く,より新しい事件ほど深刻とみなす重みづけを行います. 次に,深刻度によって重みづけされた事件情報を,地図上にヒートマップとして可視化します. 深刻度の重みは,ユーザの生活圏に応じて異なるため,個人に適応したリアルタイムな防犯 マップが生成されます.

PRISM実現の技術的なポイントとしては,まず,事件情報の構造化が挙げられます. PRISMでは,通常は自然言語で記述される事件情報をマイニングし,事件の発生日時や場所,種類等の属性を抽出して,関係データベースに蓄積します. また,蓄積されたデータをアプリから効率的に検索・取得するためのWeb-APIを開発しました. 更に,ユーザが自身の生活圏を容易に入力できるよう,自治体が公開している施設オープンデータを利用しています. これは,地域内の学校や公園,施設等の位置情報を持っており,ユーザが自身や家族の生活圏を入力する際のランドマークとして参照できるようにしています.

提案する PRISMをWebアプリケーションおよびモバイルアプリケーションとして実装しました. 今回の実装においては,事件情報の取得のために「ひょうご防犯ネット」を,施設オープンデータとして「神戸市施設オープンデータ」を利用しています. 実装したPRISMはインターネットで公開されています. アプリを利用することで,ユーザは自らの生活圏に合わせた兵庫県下の事件情報を,リアルタイムに閲覧できます.


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