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#author("2022-05-18T06:16:19+00:00","default:admin","admin")
#author("2022-06-03T08:14:52+00:00","default:admin","admin")
[[Research/SmartHealth]]
* 音声対話エージェントを活用した在宅高齢者の自助支援サービスの研究 [#s17deade]
** 背景 [#veb0aff8]
現在世界的に高齢化が進行しており,特に日本は超高齢社会に突入しています.内閣府発行の高齢社会白書によると,日本の高齢化率は年々上昇を続け,2019年には28.4%にも及んでいます.また,2025年には約700万人が何等かの病気を抱えていることになり,これは全人口の五分の一にも登ります.そのため介護に関する施設や人材の不足が問題になっています.これを受けて,政府は従来の施設介護から在宅
介護への転換を図っています.
現在世界的に高齢化が進行しています.特に日本は深刻で,65歳以上人口の割合が21%を超える超高齢社会に突入しています.
内閣府発行の高齢社会白書によると,日本の高齢化率は,2019年には28.4%にも及んでおり,さらに増加し続けていくとされています.
そのため介護に関する施設や人材の不足が問題になっています.
これを受けて,政府は従来の施設介護から在宅介護への転換を図っています.
しかし,家族への介護負担や老々介護・認々介護・独居などの問題を考えると,人の手による自助・互助の支援には限界があります.そこで,テクノロジによる自助・互助支援が注目されています.
しかし,家族への介護負担や老々介護・認々介護・独居などの問題を考えると,人の手による自助・互助の支援には限界があります.
そこで,テクノロジによる自助・互助支援が注目されています.
** 従来研究 [#v48abc7c]
我々の研究室では,在宅高齢者・認知症患者の自助・互助を支援するシステム・サービスの研究・開発を行っています.
その一つに「VA(Virtual Agent)傾聴サービス」があります.
** 課題 [#f5da84f9]
加齢による認知機能の低下は高齢者全般に見られ,認知機能の低下によって予定や持ち物を忘れたりやるべきことをやり忘れるといった日常生活の支障が起きてしまいます.これらが原因となって生活の質(Quality of Life)が低下します.
CENTER:&attachref(,zoom,70%);
このような問題に対して,現状の在宅介護では生活を共にする家族介護者がその時々に口頭で情報を提示したり注意を促したりして,当事者の生活を支援しています.しかしながら,認知機能の低下が進むと,何度も繰り返して同じ注意を行わなければならず介護者の新進に大きなストレスがかかってしまいます.同時に注意される当事者も落ち込み,いさかいや不和が起きてしまっては元も子もありません.
このサービスは,音声対話エージェントが高齢者の話を傾聴することで,センサでは観測できない「こころのうち」を取得することを目的としたサービスです.
高齢者が内に秘めた想いを話すことで,ストレスの解消にもつながります.
これまでにも高齢者の在宅生活を支援するための様々なシステムやサービスが研究開発されています.代表的なものとしてICレコーダーを活用した物忘れ支援の手法が考案されています.これは介護者がICレコーダーに注意喚起したい情報をあらかじめ音声で録音しておき,レコーダーのタイマー機能で再生することで定期的な声掛けやリマインドを実現しています.
しかしこの手法には課題が存在します.録音したものを再生するだけなので,毎回同じ情報を繰り返して提示することしかできず,場所や時間に応じた多様な情報提示を行うことはできません.このような支援技術は極めて有効に働く場面が存在する一方で,多様な在宅介護の状況や高齢者の生活スタイルに適応した支援の実施に限界があります.
** 課題 [#f5da84f9]
現在,インターネット上には便利な情報やサービスがたくさん存在します.
その中には在宅高齢者の自助支援につながるものもあります.
例えば「認知症ちえのわnet ( https://chienowa-net.com/ )」は,物忘れなどの困りごとへの対処法をまとめたサイトです.
また「YouTube (https://www.youtube.com/ )」は,日々の生活を豊かにするという点で自助支援につながるサービスです.
** 目的・アプローチ [#n607802f]
本研究の目的は,認知機能に不安がある高齢者や認知症当事者を対象として,本人の在宅生活のスタイルに適応する形で,必要な情報を提示する支援技術を実現することです.
一方,多くの高齢者はPCやスマートフォンなどのデバイスの操作に慣れていません.
令和2年度 第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果によると,日本の高齢者のうち普段からスマートフォンを使用しているのは44.5%, PCを使用しているのは31.1%とされています.
さらに,その内インターネットで情報を集めたりサービスを利用するのは31.7%と言われています.
この目的を達成するために,本論文では宅内の様々な場所と時間に応じて,適切な情報を音声で提示するシステム「ALPS:Assisted Living by Personalized Speaker」を開発しました.
そのため,高齢者がインターネット上の便利な情報やサービスを利用することが困難になっています.
ALPSは人感センサ付きのIoTスピーカーを宅内の要所に設置し,クラウドのECAルールと連携することで,場所と時間に応じた情報を音声で提供します.ALPSは個人に適応した支援を以下の三つのアプローチで実現します.
A1:IoTスピーカーの設置
** 目的・キーアイデア・アプローチ [#n607802f]
本研究の目的は,デバイスの操作が不慣れな高齢者に対しても情報やWebサービスを提供することです.
A2:ECAルールの登録
キーアイデアは,デバイスを直接操作することなく音声対話のみでWebサービスを実行することができれば,高齢者でも簡単に情報やサービスを利用できるということです.
A3:ルール評価と音声提示
そこで,VA傾聴サービスに「音声対話のみでWebサービスの実行を可能にする機能」を追加します.
これを2つのアプローチで実現します.
それぞれについて,次項でアーキテクチャの図とともに説明します.
A1:異なるサービスにおけるユーザ情報の一元管理
** システムアーキテクチャ [#od70bb14]
ALPSは以下の画像のようなアーキテクチャで構成されています.
A2:音声対話を通したAPIの実行
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A1について,対象者の抱える困りごとに基づいて,家族介護者が情報を提供すべき場所を選定し,それぞれの場所にIoTスピーカーを設置します.各IoTスピーカーには人感センサが備わっており,人の近接を検知するとイベントを発行します.IoTスピーカーは以下の写真のようなものです.
** システムアーキテクチャ [#od70bb14]
提案システムのアーキテクチャを以下に示します
CENTER:&attachref(alps_front.jpg,zoom,10%);
CENTER:&attachref(,zoom,70%);
A2について,家族介護者が対象者に対して「どこで」「いつ」「どのような」情報を提示すべきかを考え,ECAルールの形式で設定します.ECAルールとは,場所と時間に応じた情報提示をルールベースにまとめたものです.
A1について,You-IDサービスを作成しました.
このサービスに各サービスのユーザ情報を登録して一元管理することで,傾聴サービスからシームレスに任意のサービスの情報を取得することができるようにしました.
E(イベント):IoTスピーカーの設置場所での人感検知イベント
A2について,以下の4 Stepによって,音声のみでAPIを実行し,ユーザにサービスや情報を提供できるようにしました.
Step1: キーワードによるサービス実行シナリオの開始
C(コンディション):時間帯と曜日による情報提示条件
Step2: 対話を通したパラメータの取得
A(アクション):スピーカーから提示される情報
Step3: APIの実行
を表しています.
Step4: 実行結果の整形・表示
** ケーススタディ [#v94a8726]
今回は二人の高齢者,ミヨコさんとキヨシさんについて考えます.
ミヨコさんは加齢による物忘れがあり,「携行品を忘れる」という困りごとを持っています.
この時に設定されるルール例としては,「(E)玄関で人感が検知される」のがよく出かける「(C)月曜,水曜,土曜の10:00~11:00」であった場合,「(A)家の鍵は忘れていませんか?」と情報を提示するというルールの設定が考えられます.
** 評価実験 [#v94a8726]
在宅高齢者に対して,提案システムの評価実験を行いました.
実験期間は1週間で,提案システムを被験者宅に置き,期間内に連携したサービスを最低一回は実行してもらいました.
今回連携したサービスは,「動画再生サービス,カレンダーサービス,検索サービス,過去の発言内容を振り返るサービス」の4つです.
実験終了後,アンケートに回答して頂きました.
キヨシさんは軽度認知症であり,「トイレを流すことを忘れる」という困りごとを持っています.
この時に設定されるルール例としては,「(E)トイレで人感が検知される」のが「(C)一日中いつでも」であった場合,「(A)トイレを流し忘れていませんか?」と情報を提示するというルールの設定が考えられます.
その結果,提案システムにより音声のみで簡単にサービスを利用することができたという評価を得ることができました.
これらの設定を実際に行い,動作実験を行ったところ期待通りの動作が行われることが確認できました.