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#author("2019-03-18T11:23:59+00:00","default:admin","admin")
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[[Research/SmartHealth]]
* エージェントによる「こころ」センシングを活用した物忘れ支援サービス [#y345b773]
** 背景 [#h8cc6697]
現在,日本は超高齢化社会に直面し,様々な社会的な課題が懸念されています.
介護分野においては,介護人材・介護施設の不足が深刻であり,これに対し政府は,施設介護に対する取り組みより,在宅介護への取り組み支援を始めています.
在宅介護における異常検知を行うシステムとして,''見守りシステム''がよく知られています.
見守りシステムとは,センサやウェアラブル機器を用いて高齢者の状況をモニタリングし,異常が検知された場合に介護者にその発生を通知するシステムで,徘徊検知システムや高齢者ケア包括支援システムなど多くのシステムが実際に開発されています.
我々の研究グループでも先行研究において,[[Research/環境センシングを利用した在宅認知症者のための異常検知・対応サービスの検討]]を行っていました.
我々の研究グループでも先行研究において,[[Research/環境センシングを利用した在宅認知症者の異常検知・対応サービス]]を行っていました.
** 課題 [#ga0f56b0]
既存の見守りシステムは,予め決められた異常しか検知できず,症状が異なる認知症者に幅広く適用できません.
既存の見守りシステムは,外部から観察可能な行動認識にとどまります.
さらに,異常検知後の対応が介護者やオペレータ等の人間への通知に限られているという課題があります.
すなわち,行動が起こる際に高齢者が何を思い,どのような心情にあるのかを取得することはできません.
こうした健康に直結する心の内面の情報を,我々は''内的状態''と呼んでいます.
内的状態はセンサでは計測が困難であり,通常は専門家による問診やカウンセリングを通して得られますが,自宅では恒常的に実施できない状況にあります.
** 目的とアプローチ [#vc019df8]
&attachref(Research/環境センシングを利用した在宅認知症者のための異常検知・対応サービスの検討/architecture.png,center,40%,全体アーキテクチャ);
これらの課題を解決するため,我々の研究グループでは内的状態を取得・蓄積することで高齢者の物忘れを支援するシステムを構築しています.
これらの課題を解決するため,我々の研究グループでは認知症者の自宅における''複数の環境値''(温度,湿度,照度,気圧,音量,モーション,振動)をIoTを用いてセンシングし(''環境センシング''と呼ぶ),認知症者と介護者一人ひとりに寄り添った在宅介護支援を実現することを目指しています.
1つめのアプローチとして,内的状態を言葉として外化させる'「こころ」センシング'の開発を行っています.
本研究では特に,この環境センシングを活用した異常検知に焦点を当て,個人毎に異なる異常の定義と,その検知・対応をユーザが柔軟にカスタマイズできるサービスを提案します.
環境センサを用いた行動認識や位置検知などの様々なイベントをトリガーとして,ユーザの携帯端末に対して現在の体調や心情を尋ねるメッセージを送信します.
具体的には,コンテキストアウェアサービスの考え方を取り入れ,宅内で観測される異常をコンテキストと捉えます('’異常コンテキスト'’と呼ぶ).
システムからの質問に回答してもらう形で,ユーザにスマートフォンを用いて心の内を入力してもらいます.
異常コンテキストは,環境センシングで取得される現在または過去の環境値を用いて定義されます.
あるいはユーザの好きなタイミングで思ったことや,起こった出来事を自発的に入力してもらいます.
この異常コンテキストを,ユーザ(介護者またはケア提供者)が認知症者の症状に合わせて自由に定義できるようにすることで,人それぞれ全く異なる異常を柔軟に扱えるようになります.
ユーザから送信されたメッセージはWeb-APIを通してデータベースに保存されます.
さらに,異常発生時の対応については,従来の人間への通知に加えて,3種類の対応('’語り掛け,興味・関心を引く,アクティビティに誘う'’)を用意します.
これにより高齢者はいつでもどこでも情報を記録し,物忘れに備えることができます.
語り掛けとは,認知症者の名前を呼び,短くわかりやすく語り掛ける対応です.
2つめのアプローチとして,蓄積された内的状態をユーザ自身が思い返すことで記憶に役立てるサービスの開発を行っています.
興味・関心を引く対応とは,認知症者の気持ちに沿いながら上手に話題をそらす対応です.
ユーザは1日に入力したメッセージの修正と分類を行う短期的な振り返りと,過去に入力したメッセージの検索による長期的な振り返りを行うことが出来ます.
アクティビティに誘う対応とは,認知症者の気持ちに沿いながら活動の誘導を行う対応です.
右図のようにバーチャルエージェントとやりとりをしながら,心の内を振り返ることで,自助に役立てることが期待できると考えています.
これらの対応をヴァーチャル・エージェント技術を用いることで,システムが人間に代わって実行するようにします.
&attachref(./maeda.png,60%);
&attachref(./screenshot.png,40%);
提案サービスでは,定義した各異常コンテキストに対して,上記の対応を自由にひもづけることで,通知以外の異常対応を実現できます.
システムは環境センシングを通して異常コンテキストの成立を自動検知し,登録された対応を自動的に実行します.
本研究では,提案サービスのプロトタイプをRESTful Webサービスとして実装しました.
これにより,異常コンテキストの定義や評価をWeb経由で容易に行えます.
また,異常コンテキストの定義や対応の登録を行うためのGUIも作成しました.
異常コンテキストの検知と異常対応の実行を行うサービスとしては,我々の先行研究で開発しているコンテキストアウェアサービス基盤RuCASを利用しました.
最後に,提案サービスの実用性を確認するために,実装したプロトタイプサービスを利用して,「突然大声を上げる」という異常に対して「語り掛け」で対応する,異常検知・対応のケーススタディを行いました.
提案サービスによって,認知症者や介護者の一人ひとりの状況に応じた柔軟な異常検知・異常対応が可能となります.
これによって,介護者の負担が少なくなり,継続的で質の高い在宅認知症介護の実現に貢献できtると考えています.
** 発表文献 [#fbb12703]
前田晴久, 佐伯幸郎, 中村匡秀, 安田清, ``エージェントによる「こころ」センシングを活用した 物忘れ支援サービスの提案,'' 電子情報通信学会技術報告書, vol.118, no.511, SC2018-40, pp.19-24, March 2019. (東京・国立情報学研究所)