Research/HNS

背景

宅内の各種センサを含む多様な家電機器をホームネットワークに接続し,多種多様なサービスを提供するホームネットワークシステム(HNS)の研究・開発が進みつつあります.ネットワークに接続されたテレビやエアコン,扇風機,照明機器,温度計,照度計等の機器(ネット家電)を使用することで,これらの遠隔制御や宅内監視,複数機器の連携制御といった付加価値の高いサービスが実際に開発されています.

これらのサービスは,一般にネット家電が持つAPIを組み合わせることで構築されます.しかし,宅内に配置されるネット家電はユーザや家庭ごとに異なる可能性が高く,さらに現状商品化されているサービスは,単一ベンダ製のネット家電のみに対応しているものが殆どである,等の問題があります.その要因として,ネット家電のAPIの仕様がそれぞれのベンダによって異なることが挙げられ,このことはサービスとネット家電とを強く結び付けてしまう(密結合化)原因ともなってしまいます.そのため,サービスのアルゴリズムとそこで利用されるネット家電データを分離(疎結合化)することにより,別のユーザ環境におけるサービスアルゴリズムの再利用の容易化が期待できます.また,サービスに利用されるネット家電データを特定のモデルにもとづいて標準化し,サービス間で共有することにより,サービス開発時のデータ処理ロジックも再利用可能となり,開発コストのより一層の削減が見込まれます.

提案手法

本研究では,HNS上で実現されるサービスと連携可能なネット家電標準データモデルの構築を目指します.我々の提案するネット家電標準データモデルは,以下の3つから構成されます.

D1:ネット家電クラス定義(クラスレベル)

ユーザの宅内に配置されるネット家電は非常に多様で,同じ種類の家電であっても提供する機能に差がある状況は十分に考えられます.そこで,その種の家電がベンダに因らずに標準的な機能を抽出し,それらの機能をネット家電クラスとして定義することで,ユーザの宅内環境に依存しないネット家電データを開発者に提供することができます.

D2:ネット家電インスタンス定義(インスタンスレベル)

ネット家電インスタンス定義では,ネット家電のURIやAPI種類等の宅内に配置された各ネット家電への詳細なアクセス方法に関する定義を保持します.ここで言うネット家電インスタンスはユーザの宅内環境に配備された個々のネット家電そのものを指し,すべてのインスタンスは特定のネット家電クラスに属しています.ネット家電へのアクセス手法をインスタンス定義として記述することで,提供するサービスに依存しないネット家電の情報を集約することができます.

D3:ネット家電サービス定義(サービスレベル)

ネット家電サービス定義はサービスに依存するネット家電データを保持する定義で,サービス開発者はネット家電を用いて特定の処理をユーザに提供するために,ネット家電サービス定義を作成します.ネット家電サービス定義では,サービス実現のためのアルゴリズムとネット家電オブジェクトが記述されています.ネット家電オブジェクトは対象となるネット家電クラスに基づく抽象表現で,個別のネット家電インスタンスに依存しません.定義内のネット家電オブジェクトとネット家電インスタンスの関連づけをサービス定義に記述することで,サービスのアルゴリズムとネット家電インスタンス間の疎結合化が可能となります.結果として,一つのネット家電サービス定義を多様なユーザ環境に対応させることが容易化されます.

HNSDM.jpg

このように,ネット家電が持つ各種の情報を異なる粒度ごとに分離することで,再利用性の高い標準データモデルを構築することが可能となります.

発表文献

江上 公一,井垣 宏,中村 匡秀, ``ホームネットワークシステムにおけるサービス開発を容易化するネット家電標準データモデル,'' 電子情報通信学会 OIS研究会, vol.OIS2008, pp.75-80, March 2009.


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Last-modified: 2024-02-14 (水) 11:29:47