#author("2019-03-18T06:43:36+00:00","default:admin","admin")
[[Research/SmartCity]]

2018年は我が国において災害が多発する年となった.
しかし,日本においてこのように災害が多発するのは2018年だけでなく,毎年災害による死者・行方不明者が生じている.
その中で逃げ遅れによって災害の被害にあう人々が一定数存在する.
このような逃げ遅れは自らの命を危険に晒すだけでなく,被災者全体の救助を遅らせてしまう要因の一つにもなり得る.
このことから,我が国が災害大国であることを理解し,災害時に各住民が適切な避難行動をとることが非常に重要であるとわかる.

本研究においては,上記の逃げ遅れによって被害にあう人の中でも災害発生地に居合わせてしまった人々や,身体的に不自由を抱えている人々ではなく,避難意識の欠如から逃げ遅れる人々を対象の中心とする.
このような人々は災害への危機意識が低い,また,自身は災害による被害にあうことはないと考える正常性バイアスに陥る傾向にあるため,結果的に適切な避難行動がとれず,災害に巻き込まれる可能性がある.

災害時に住民に対して避難を促す手段自体は既に存在しており,ここでは既存の避難勧告の手段としての代表的なものをいくつか挙げる.
まずはTV放送である.
TV放送は映像が流れることから状況の把握がしやすいが,特定の市町村を対象とした詳細な情報伝達の繰り返しが難しい.
次にラジオ放送である.
これはTV放送と違い,市町村単位の詳細な防災情報を伝達することが可能となっているが,視覚的な情報がないことから状況を想像しづらい.
近年扱われるようになったものとして緊急速報メールとTwitter等のSNSもあげられる.
緊急速報メールは屋内外問わず,特定エリア内に一斉配信されるが,携帯電話事業者の利用規約によって配信項目や文字数に制限がある.
Twitter等のSNSはリアルタイムに情報のやり取りができるほか,画像,動画等を共有することで状況の把握もしやすくなっている.
しかし,非常に多くの情報が配信されると,自分に関連する情報にたどり着きにくいという問題がある.

前述のとおり,住んでいる地域や状況がそれぞれ異なる個人に対して避難意識を高めるという観点を考えると,従来の避難勧告の方法は以下に示すP1~P4の課題がある.

[P1. 従来のメディアはミクロな災害状況を配信できない:]
TV放送や気象庁の情報は主に地域全体のマクロな災害状況を配信している.しかし,住民それぞれの身近な地域のミクロな災害状況をリアルタイムに配信するためには,情報収集のための人手や装置に限界がある.
[P2. 様々な粒度の災害情報を視覚的に,一元的に把握する手段がない:]
TV放送や気象庁が配信するようなマクロな情報であれば,視覚的に把握する手段はある.しかし,地域ごとのミクロな災害状況を取り扱った媒体がないため,これら2つの災害情報を1つの媒体を通して視覚的に把握することは現段階ではできない.
[P3. 避難意識の低い住人が避難の重要性を認識できない:]
住人の現在地周辺にどのような被害がでている,またはでることが予想されると把握していない.またそれに伴う警戒情報の危険性も認識できていないことがある.
[P4. 避難意識の低い住人が適切な避難経路を判断できない:]
災害状況に合わせた避難場所の位置を事前に確認していない.また,ハザードマップ等を通して災害時の通行が非推奨である経路を把握していない.

これらの問題により住民は個人に合わせた災害情報が得られず,災害に対する危険性を実感しづらくなる.
結果として,避難意識が向上せず適切な避難行動に繋がらない.

そこで本研究では,上記で述べた課題P1~P4を解決するために災害区域の人々に周辺の災害状況を把握させ,避難意識を高めることで適切な避難行動を促すアプリケーションCANDLE (Crowd Assisted Navigation for Disaster Localization and Evacuation)を開発し,以下に示す4つのアプローチA1~A4をとる.

[A1. 群衆が災害状況を収集する:]
メディア等で収集することが困難な全国にわたる局所的災害情報の取得が可能になる.
[A2. 災害情報を地図上で可視化・共有する:]
ユーザ全員が参照可能な地図に災害情報を可視化することで周辺状況を視覚的に把握しやすくなる.
[A3. 現在地に対応した避難行動を提案する:]
個々人に応じた避難行動の指示,提案を行うことで当事者性が増し,適切な避難行動に繋がる.
[A4. 現在地に対応した避難経路の誘導を行う:]
周辺の災害状況を考慮した避難経路を提示することでユーザが適切な避難所へ安全に避難できる.


本稿では上記のアプローチに基づいて,CANDLEのユースケースを作成し,アーキテクチャを設計する.
また,ユースケース実現に必要なシステム機能を提案する.
さらに本稿では提案したCANDLEの一部機能をWebアプリケーションとして試作し,提案手法の実現可能性を検証する.

提案するCANDLEによって災害時におけるユーザ個人に応じた周辺状況が理解しやすくなり,災害の危険性を把握できる.
結果として,災害に際して避難意識が向上し,適切な避難行動に繋がることが期待できる.

本論文の以降の構成は次の通りである.
2章では,CANDLEの提案に必要な災害に関する関連情報について述べる.
3章ではCANDLEのユースケースに基づいた全体アーキテクチャ,各機能面について述べる.
4章ではCANDLEの実装にあたっての詳細について述べる.
最後に5章では,今後の課題とともに本論文をまとめる.


トップ   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS