[[Research/SmartCity]]

近年,モバイルデバイスなどの電子機器の高性能化やインフラ整備が進み,あらゆるモノがインターネットに接続するIoT (Internet of Things) の時代が到来しています.それに伴い,ユーザはモバイルデバイスなどのセンサによって,様々な場所で位置情報などの現在位置に基づいた情報を取得し,それをインターネットと連携して活用するサービスの利用が広がっています.例えば,位置情報のログを記録して活用するサービスとして,家族の位置情報をいつでも追跡できるサービスが提供されています.また,ユーザの位置情報に基づいて適切なサービスを提供するロケーションアウェアサービスとして,東京国立博物館では,近くの展示品の解説を自動で行うサービスが提供されています.このように,様々な分野で位置情報のスマートサービスへの利用が進んでいます.
位置情報には様々な表現方法が存在します.例えば,緯度と経度を組み合わせた情報や住所,「公園から東に500 メートル」といった二つのオブジェクトの位置関係などが存在します.このような位置情報は,絶対的な位置情報を利用する絶対位置情報と,相対的な位置関係の情報を利用する相対位置情報の二つに分類できます.絶対位置情報とは,測位システムにとってある一つの地点を表す位置情報です.一方,相対位置情報とは,別のオブジェクトから見た相対的な位置を表す位置情報です.絶対位置情報は,緯度・経度や住所などの一意な場所を示す絶対座標系で表され,相対位置情報は,二つのオブジェクトの位置関係を,距離や方角などによって示す相対座標系で表されます.近年のモバイルデバイスでは,絶対位置情報と相対位置情報それぞれを検知する技術が搭載されています.絶対位置情報は,GPS(Global Positioning System,全地球測位システム)などの位置情報システムによって測位可能であり,相対位置情報は,BLE(Bluetooth Low Energy) やWi-Fi のアドホック・モード等の近接検知機構で,二つのオブジェクトの近接(すれちがい)を検知することによって測位可能です.

近年,位置情報利用の簡易化に伴い,絶対位置情報や相対位置情報を用いた様々なアプリケーションやサービスが開発されています.しかし,位置情報を用いたアプリケーションは,それぞれ基準となる位置や情報の時間的・空間的解像度が異なり,アプリケーション間における位置情報の相互参照性はありません.よって,アプリケーションごとにそれぞれの表現方法を考慮した位置情報の設計を行う必要がありますが,結果的に位置情報の再利用性が低くなり,アプリケーション間で位置情報を共有することも難しくなります.ここで,様々な系から変換可能な,より柔軟性の高い時空間情報を表現できる位置情報の系があれば,位置情報を相互に参照することで,異なる系の位置情報から新たな位置情報を推測することが可能になります.
そこで,本研究では,柔軟性の高い位置情報の系として確率的位置情報を提案します.確率的位置情報とは,あるオブジェクトの,ある時刻における位置を,領域と存在確率の組み合わせで表現する位置情報です.確率的位置情報を用いることによって,あるオブジェクトの,ある時刻における,存在する可能性がある領域を推測し,表現することができます.絶対位置情報と相対位置情報の連携による位置情報の推測は,Dead Reckoning技術やその改善法などがすでに提案されていますが,相対位置情報の扱いについて一般化されてるとはいえません.
本稿では,異なる系の位置情報を組み合わせて,任意の時間における確率的位置情報を計算する手法について検討します.異なる系の位置情報の組み合わせには様々なものが考えられますが,一例として,緯度・経度などによって表現される,地理座標系による絶対位置情報と,二つのオブジェクト間の距離によって表現される,すれちがいによる相対位置情報を利用する手法について検討を行います.提案手法では,あるオブジェクトの,ある時刻における位置情報を出力する際,近傍時間における絶対位置情報のログを参照することや,相対位置情報と絶対位置情報を連携することによって,オブジェクトがある時刻に存在する可能性のある領域を推測し,確率的位置情報として表現します.本手法によって,これまで認識できなかった位置情報を利用することが可能になります.また,提案手法による確率的位置情報の計算精度を検証するために,提案手法を扱うサービスの設計について検討します.


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