Research/SmartCity

背景

身の回りのあらゆるデバイスをインターネットに接続する,IoT(Internet of Things,モノのインターネット)の時代が到来しつつあります.
従来のインターネットは,その末端は人であり,あくまで人と人を繋ぐための手段でした. 一方IoTの世界では,人の手を介することなく,モノが主体となってインターネットに接続します.
これにより,例えば家のドアそのものが施錠状況を監視し,鍵の閉め忘れを通知するといった実世界のモニタリングシステムや, 窓そのものが外気温の低下を検出し,エアコンの運転モードを弱めるといった 自律的な家電同士の省エネ連係システムなどが可能となります.
さらにIoTの適用範囲はこのような宅内に限ったものではありません. オフィスや都市全体,交通,農業,マーケティングなど,あらゆる分野に変革をもたらすコンピューティングパラダイムとして期待されています.

IoTにおける最も原始的かつ基本的な操作は,インターネットを経由した「モノの状態取得」,及び「モノの操作」の2つです.
これらは,インターネットを主体として見たときの,物理世界からの入力と物理世界への出力に該当します. 先ほどのドア施錠監視システムの例の場合,「モノの状態取得」は,ドアによる鍵の施錠状態のセンシングと家による住人不在イベントの検出が該当します.
さらに「モノの操作」は,インターネットを経由したドアの施錠操作,及びスマホやスピーカーによる閉め忘れの通知が該当します.

家電に限らず,ペンや本,書類の一枚一枚といった,身の回りのあらゆるモノに対してこの2つの機能が満たされれば, インターネット(あるいはソフトウェア)と物理世界の間の障壁はなくなり,これまでにない価値の創造が実現されます.
IoTの実現と普及のためには,この2つの機能をいかに達成するかが重要な鍵となります.

課題

このうち「モノの状態取得」(以降,IoTセンシングと呼ぶ)を実現するためには,いくつかの課題を解決する必要があります.

第一にスケーラビリティの問題が挙げられます.
あらゆるモノが自身の状態や周辺環境の状況を定期的にセンシングしてインターネットに送信するため, センシングデータを収集する基盤側へのアクセスの負荷集中が発生します.
現在では,電源の供給やセンサデバイスの小型化の限界といった技術的な制約により, IoTにおけるモノとして接続可能なデバイスには限界があります. しかしながら,将来的には様々なモノがセンシング機能を持つことは想像に難くありません. よってセンシング基盤には,モノの増加に対してうまく負荷を分散させ,スケールできる仕組みが必要です.

また,設定・管理の容易性という課題も考えられます.
IoTセンシングにおけるモノの設定・管理には,新規デバイスを追加する際の初期設定や,デバイス故障・通信切断などの異常検出, 上位アプリの要求に応じたセンシング頻度の変更など様々なものが考えられます.

これらの設定・管理を全てのモノ一つ一つに行うことは非現実的であり, ある程度の自動化や,一括での設定変更といった工夫が必要です.

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アプローチ

本研究ではIoTセンシングを実現する方法として,軍隊のアナロジを取り入れたセンシング基盤, センシング部隊を提案します.

センシング部隊では,まずIoTにおける個々の「モノ」を「兵(二等兵)」と見立てます.
この二等兵は,自信の状態に関するデータ(起動状態や利用状況,本体温度など)や, 周辺環境に関するデータ(温度や湿度,照度など)といった様々なセンシング結果を収集し送信する機能を持ちます.
この二等兵の一定のまとまりを分隊と見立て,分隊ごとにセンシング結果を集約するような階層構造(ヒエラルキー)を構築することで, 負荷分散と高スケーラビリティを実現します. さらに上官から部下への命令の伝達というコンセプトを基盤に取り入れ, 分隊ごとに自律的に二等兵を監視させることで,設定の容易化を達成します.

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発表文献

井元 滉, まつ本 真佑, 佐伯 幸郎, 中村 匡秀, ``軍隊ヒエラルキーに基づくスケーラブルなIoTセンシング基盤の検討,'' 電子情報通信学会技術研究報告, vol.115, no.138, LOIS2015-10, pp.007-012, July 2015. [PDF]


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Last-modified: 2016-05-09 (月) 13:09:01 (986d)