Research/SmartHealth

宅内の環境変化と声掛けに基づく在宅高齢者の日常生活行動センシングシステムの検討

背景

現在,日本は超高齢化社会を迎えており,2025年には総人口がおよそ1億2114万人に減少すると言われています. 一方,65歳以上の高齢者数はおよそ3657万人となり,総人口の約30.3%が65歳以上の高齢者となることが予想されています. また,深刻な介護人材不足も進んでおり,介護分野の有効求人倍率は高く,2014年12月の調査では2.68倍であると報告されています. さらに,特別養護老人ホームの入所申込者数(待機老人数)が52.4万人と発表されるなど,介護施設も不足しています. こうした背景を受け,日本政府は介護施設を増やす取り組みよりも,在宅介護の支援・推進を始めています. そのため今後,高齢者介護の形態として家族介護が増加し,家族の介護負担が重くなることが考えられます. よって,在宅での高齢者介護の負担を和らげる技術やシステムが必要とされています.

課題

高齢者の在宅介護を支援するテクノロジーとして,ICTを活用した見守りシステムが有望視されています. とりわけ近年では,行動認識技術によって高齢者の日常生活行動(activities of daily living, ADL)を認識し, 非常時に介護者へ通知するシステムが盛んに研究されています. 行動認識技術とは,環境センサやウェアラブルデバイス,カメラなどから得られたデータを解析することで, 見守り対象の人の状態や行動を推定・判別する技術です.

しかし,従来の見守りシステムには以下の課題があります.

課題P1(導入コストと侵襲性)

システムを一般家庭に導入する際に,家の工事や改築が必要になる場合がありコストがかかります. また,カメラやウェアラブルデバイスを利用したものは,高齢者の日常生活への侵襲性が高くなります.

課題P2(行動のラベル付けの手間)

行動認識では観測したデータをADLに分類するために機械学習を用います. 学習のためにはADLのラベルがついた訓練データ(正例)が必要となります. 従来手法では,数分毎に定期的にADLを記録・入力する必要があり,高齢者や介護者にとって大きな負担となります.

課題P3(高齢者へのコミュニケーションの欠如)

従来の見守りシステムのほとんどは,何か起こった時に介護者に通知を出すだけで, 本来重要である高齢者に対するコミュニケーションやケアを直接行うものは少なく,介護者の大幅な負担軽減には至っていません.

目的とアプローチ

これらの課題を解決すべく,本研究では,宅内の環境変化をトリガとする声掛けによって, 高齢者のADLを把握する新たなセンシングシステムを提案します.

まず課題P1を解決するために,我々が先行研究で開発している自律センサボックスを宅内に設置します. 自律センサボックスとは,温度,湿度,照度,気圧,音量,振動,人感の7つの環境センサを内蔵したIoTデバイスです. 電源を入れるだけで周囲の環境値を自律的に測定し,クラウドにデータをアップロードします. 宅内の様々な場所に手軽に設置でき,高齢者への侵襲性も無いです.

次に課題P2を解決するため,測定した環境データを時系列解析し,環境に変化が起こった際にのみ,高齢者にADLを入力してもらうようにします. 本研究では,クラウドに収集した環境時系列データに対してChange Finderアルゴリズムを適用し,オンラインで変化点検知を行うサービスを実装します.

最後に課題P3を解決するため,高齢者によるADLの入力をヴァーチャルエージェント(VA)との声掛け・対話によって入力するようにします. Change Finderによって環境の変化が検知されると,宅内のVAが高齢者に現在何をしているのかを問いかけます. 高齢者は声でVAに回答することでADLが記録されます.

提案システムによって,非侵襲なセンシングによって低負荷でADLを記録できるとともに, 高齢者に対して声掛けや気遣いのコミュニケーションを創出できます. これにより,従来システムに比べてより導入の敷居が低く,より高齢者に寄り添ったケアを実施できます.

サービスのアーキテクチャ

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発表文献

玉水一柔, 榊原誠司, 佐伯幸郎, 中村匡秀, 安田清, ``宅内の環境変化と声掛けに基づく在宅高齢者の日常生活行動センシングシステムの検討,'' 電子情報通信学会技術研究報告, vol.116, no.405,LOIS2016-49, pp.7-12, January 2017.


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Last-modified: 2017-04-13 (木) 15:26:40 (647d)