ユビキタス技術の進歩により,テレビ,DVDプレーヤ,照明,換気扇,冷蔵庫,エアコン,ブラインド,カーテンといった家電製品が,家庭内ネットワークに接続できるようになってきています.ホームネットワークシステム(HNS)とは,こうした(複数の)ネットワーク家電で構成されるシステムであり,より便利で快適な暮らしをユーザに提供することを目的として,研究・開発が進んでいます.昨今では,いくつかのベンダが実際の商品を開発,販売しています.
HNSの利点は,ネットワークを通して,複数のネットワーク家電の機能を連携できる点にあります.複数の家電を組み合わせて使用することで,より便利で付加価値の高いサービス(HNS連携サービスと呼ぶ)を実現できます.例えば,テレビ,DVDプレーヤ,スピーカ,照明,カーテンを連携させることで,DVDシアターサービスを実現できます.ユーザはワンタッチで,映画館にいる雰囲気で映画を楽しめます.
近い将来,組み込みデバイスがより安価で小さくなれば,家庭内の全ての「モノ」がネットワーク化されるであろうといわれています.
しかし,一般の家庭にとって,家電のフルネットワーク化にはまだまだ時間がかかりそうです.ネットワーク環境は普及しているものの,いまだに旧来の家電(レガシー家電と呼ぶ)が使用されています.ネットワーク家電が普及しない理由として,我々は以下の理由を考えています.
特に理由3が深刻です.これにより,現在のほとんどのHNS製品はシングルベンダ製であり,さらに連携可能な機器の組み合わせは非常に限定されています.従って,ユーザにとって家電の選択の余地がなく,HNS普及を妨げている大きな原因と考えています.
この問題を解決するために,本研究では,レガシー家電をホームネットワークに収容するための新たな枠組みを提案します.具体的には,赤外線リモコン(IrRC)対応のレガシー家電に対して,HNSに収容するためのアダプタを実装します.この実装には,サービス指向アーキテクチャ(SOA)の考え方を用います.
アダプタは,以下の3層で構成されます.
これにより,全ての従来家電は,オープンなインターフェースを持つネットワーク資源として利用可能となります.ユーザは,レガシー家電を自由に組み合わせたアプリケーション,連携サービスを実装できるのです.また,Webサービスを用いることでに,インターネット上の様々なWebサービスと家電とを連携させることも容易に実現可能です.例えば,「晴れの日には照明を切って節電する」とか,「注目している株価が上がったら,チャイムを鳴らしてテレビをつける」など様々な可能性が考えられます.
提案手法に基づき,実際のレガシー家電を用いたHNSを実装しました.SOAの考え方を採り入れることで,以下の特徴を満たすHNSが実現できました.
また,性能,生産性,拡張性,移植容易性,保守容易性等の観点からも評価実験を行っています.