家電連携サービス作成支援システム“BAMBEE”の実装と評価
近年,ネットワークを介して家庭内の家電を操作するホームネットワークシステム(HNS)が, 人々の生活をより便利で快適にすることのできる基盤技術として注目されており,家電メーカでは ネットワーク対応家電が開発されています. そのような中,我々の研究グループは独自のHNS(NAIST-HNS)を構築し,HNS内の家電を逐次操作させる 家電連携サービスという技術に関する研究を行っています.その理由としては,家電連携サービスはネットワーク家電の付加価値を 高める技術だと考えているからです.
現在,家電連携サービスはベンダが作成し,エンドユーザは与えられたサービスを実行するという 利用スタイルになっています.しかし,エンドユーザの嗜好や生活スタイルは,家庭環境や個人ごとに 異なります.また,将来的に家電の種類が増えた場合は,自らの生活スタイルや嗜好に合わせた 家電連携サービスを,エンドユーザ自らの手で作成したいという要求が生まれることは自然です.ここで,もし エンドユーザに連携サービスを作成したいという意思が無ければ,現在の家電連携サービスの利用スタイルを 変える必要はありません.しかし,50名のエンドユーザに家電連携サービスを作成させるという予備実験を行った結果, 88%のエンドユーザが「家電連携サービスを自分で作れたら役に立つ」とアンケートで答えました. よって,エンドユーザには家電連携サービスを作成したいというニーズがあることがわかりました.
現在,エンドユーザが家電連携サービスを作成する方法としては,いくつか考えられます.一つ目は プログラムによる方法,二つ目は学習リモコンを用いる方法です.しかし,これらの方法では プログラミングに関する知識や煩雑な作業が必要であるため,エンドユーザにとっては困難だという 問題点があります.
本研究では,GUIを用いたビジュアルプログラミングにより,エンドユーザが家電連携サービスを 作成することのできるシステム(BAMBEE)を提案します.具体的には,エンドユーザが 家電連携サービスの作成・編集・削除を行えるようにするという目的を果たすため,提案システムに 必要な6つの要件を定義し,その要件を満たすように実装を行いました. 6つの要件は以下のようなものです.
本研究の目的が果たされているかどうかを確認するため,提案システムのユーザビリティテストを 実施しました.ユーザビリティテストでは,エンドユーザ24名と提案システムの熟練者4名に対し, 家電連携サービスの作成・編集・削除を行うという3つのタスクを与えました.そして,実験結果の評価には, ユーザビリティに関する国際規格ISO9241-11の評価指標を用い,提案システムのユーザビリティを測定しました. その結果,25名の被験者が全タスクを達成することができましたが,3名の被験者が家電連携サービスの編集を行う タスクに失敗しました.しかし,家電連携サービスの編集を行うタスクでは,編集を行った後に動作テストを行うという 作業があり,タスクに失敗した3名はその作業に失敗していたので,実質,家電連携サービスの編集自体は達成できて いました.よって,全被験者が家電連携サービスの作成・編集・削除を行えたといえます.