ネットワーク家電と標準インタフェースとの動的結び付けによるマルチベンダホームネットワークシステム構築手法

背景

家電やセンサを家庭内のネットワークに接続することで, 家電単体では実現できない,より便利なサービスをユーザに提供する ホームネットワークシステム (HNS) の研究開発が進められており, 既に商品化されたものも存在します.

一般的に,HNS に接続される家電はネットワーク家電と呼ばれ, 外部のソフトウェアから家電を制御するための API (家電API)を 備えています. HNS サービスは, これらの家電 API を決められた手順で呼び出すソフトウェア(HNS アプリケーション) によって実現されます.

課題

しかしながら, 現在提供されている HNS アプリケーションは, 単一ベンダ製のネットワーク家電にしか対応していないものが大半です. その原因として,同種のネットワーク家電であっても, そのベンダによって家電 API の仕様が異なることが挙げられます. そのため,HNS サービスを各家庭に提供する事業者(HNS サービス提供者)は 様々なベンダのネットワーク家電に対応した HNS アプリケーションを 開発することができず, またユーザも,好みのベンダのネットワーク家電を任意に選択し, HNS に収容させることができません.

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マルチベンダ HNS の構築

この問題を解決するために,本研究では, 複数のベンダのネットワーク家電を収容可能な HNS (マルチベンダ HNS) を構築する手法を提案します.

まず,家電の種類ごとに, 任意のベンダのネットワーク家電を制御可能な API を持つ 標準家電サービスを準備し,HNS アプリケーションに向けて公開します.

次に,これらの標準家電サービスと, HNS に収容するネットワーク家電との結び付けを行います. その際,標準家電サービスとネットワーク家電を静的に結び付ける (標準家電サービスの API が呼び出された際に行う家電 API 呼び出し処理を 静的に定義する)と, HNS に収容されているネットワーク家電の置き換えが発生する度に, 標準家電サービスを再構築する必要が生じます. そこで,標準家電サービスとネットワーク家電との結び付け定義を外部化し, 標準家電サービス実行時に, その定義に従って標準家電サービスとネットワーク家電を結び付ける機構を構築します. これにより, HNS に任意のベンダのネットワーク家電を収容することができるとともに, ネットワーク家電の置き換えが発生した場合でも, 標準家電サービスとネットワーク家電との 結び付け定義を変更するだけで対応することができます.

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実装と実験的評価

本研究では,提案手法に基づいた HNS フレームワークを実装するとともに, 実装したフレームワークを用いて複数ベンダのネットワーク家電からなる HNS を構築し, それらのネットワーク家電を連携動作させる HNS アプリケーションを実装しました. その結果, 提案手法を用いてマルチベンダ HNS を構築できること, また標準家電サービスを利用して HNS アプリケーションを構築できること, さらに HNS や HNS アプリケーションを再構築することなく, HNS に収容されているネットワーク家電を置き換えられることが示されました.

発表文献

  • Masahide Nakamura, Yusuke Fukuoka, Hiroshi Igaki, and Ken-ichi Matsumoto, ``Implementing Multi-Vendor Home Network System with Vendor-Neutral Services and Dynamic Service Binding,'' In IEEE International Conference on Services Computing (SCC 2008), pp.275-282, July 2008. [pdf]
  • 福岡 佑介, 西岡 隆司, 中村 匡秀, 井垣 宏, 松本 健一, ``動的サービスバインディング機構を用いたマルチベンダホームネットワークシステムの一実現手法,'' 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.107, No.525, pp.295-300, March 2008. [pdf]

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Last-modified: 2024-02-14 (水) 11:29:47